フーゾクDXの仕事の合間に小一時間
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老いてなお現役。チッコリーニ。
2005年10月31日 (月) | 編集 |
不勉強なものでよく知らないピアニストだったのだが、どうも気になるCDがあって、ついつい買ってしまった。ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集だったのだが、これがチッコリーニだった。

今にして思えば、これがもう亡くなった巨匠のCDだったらスルーだったかもしれないのに、よくもまぁ、手に入れたものだ。そんなワケで、名前だけは知っていたので、来日する事を知ってチケットを取ってみたのである。

そのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は、正直、ピリオド演奏に慣れきっている耳には新鮮味ゼロで響いてきた。かといって、モダン楽器の演奏としても、「ああ、巨匠風だな」と思うくらい。聴いててホッとはするが、ベストかというとそうでもない感じ。

しかし、色々と調べていくと、どうやら期待は持てそうな感じ。(そういうのが分かる前にチケットを勢いで取ってしまうというのも何だが)

そんな感じで、無理矢理上野で用事を作って東京文化会館に向かう。用事を上野にしてしまって、スミマセン>某氏

東京文化会館といっても小ホールの方。大ホールでピアノリサイタルなんかやったら、音聴こえないこと確実。小ホールはどこに座っても良さそうな感じのホールなのでいいかも。

ボクの座席は中央よりやや右より。運指は見えないのでアレだが、よく考えたら全くピアノの心得がないので関係ないっちゅーか。(逆に、周りの人はピアノ関係者なのだろうか???)

プログラムは以下。

・ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第31番変イ長調作品110
・ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第23番へ短調「熱情」作品57
(休憩)
・ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ
・ファリャ/4つのスペイン小曲集(1902〜08)
・ファリャ/アンダルシア幻想曲(1919)

この中で予習していったのはベートーヴェンだけ。

ピアノの前に現れたチッコリーニ。80という高齢だけにやや背中も丸めて、「おじいちゃん」という感じ。こういう人がベートーヴェンの曲を弾くというのもなんだかなぁ。

31番という後期の曲においては特に技術面が気になる所だが、これは凄いぞ。「技術なんか関係あるか!」とでも言いたげな遅いテンポ。そして重い音色。これを淡々と引き続けるのだ。最初の印象は「老人だから指が回らないのね、巨匠を見られただけでもいいや」という感じ。

だったのだが!

何が凄いって、このような演奏においてもただ老いぼれているのではなく、「老人の言うことは聞くものだぞ」と言っているような圧倒的な説得力。演奏については特に凄いとも思わなかったのに、しかし、この遅さゆえか、重厚感をたっぷり味あわせてくれるのである。はっきり言って、「ピアニッシモの輝きとかって要らなくない?」みたいな、デリケートさには欠けるのに、しかし、チッコリーニの存在感は十分というか。

このスタイルは「熱情」においても変わらない。(余談だが、「情熱」じゃなくて「熱情」と付けた人のセンスは凄いと思う)

しかし、「老人だからなぁ」と思っていた運指のはかどらなさは「熱情」の終盤になって覆される。「指が暖まって動くようになったんだなぁ」と思う。この時までは・・・

本当に凄いのはここからだった!

後半一曲目は急遽プログラムに加えられたラヴェルの曲。聴いたことはあるハズなのだが、ピアノ版は初体験なので、「あれ、こんな曲だったっけ?」という印象。

ベートーヴェンでは重く、遅く、デリケートでない音使いだったのが、途端に鮮やかな音色に変わっていく。

その後のファリャなんか曲すら知らないのに、音色の多彩さや運指に至るまで、前プロのベートーヴェンとは全く別人ではないかと思えるほどの生き生きした演奏。これ、80のじーさんの演奏じゃないよ!

アンコールもまた凄かった。出てくる度に演奏するので、拍手するのが申し訳ないほど。

・ショパン:夜想曲op.9-2
・ドビュッシー:プレリュード第一巻より「ミンストレル」
・ファリャ:火祭りの踊り

基本的には後プロと同じノリだが、いや、もう、フランス国籍の人だけに、エスプリを感じさせる音楽(ラテン楽派っていうの?)はノリが全然違うのだ。指が踊りを踊っているよう。

そうなってくると、「老人だから」と思っていたベートーヴェンも、これは「チッコリーニのベートーヴェン」という解釈になってくる。正直、「これはこういうものなんだ」と納得させながら聴いていた部分もあったが、今になって思えば、これはまさしくチッコリーニの音楽を聴いていたに過ぎない。

これで80だもんなぁ。来年も来たら、年よりの話を聞きに、また行っちゃうかも。



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